物理S のバックアップ(No.4)
監修講師
- 森下寛之先生(関東物理科主任)
- かつての作成者は山本義隆先生。山本師が現役時代だった70年代終わりから80年代の問題も相当数含まれている。
- 基本的には森下師が新しく差し替えたり加えた問題の図はTeXで書かれているので、古い図や絵の問題の多くは山本時代のもの。
使用コース
構成
前期Part1 | 前期Part2 |
§1-1 力と運動方程式 | §2-1 運動方程式と束縛条件 |
§1-2 単振動 | §2-2 運動量と運動エネルギー |
§1-3 円運動 | §2-3 2物体の相互作用 |
§1-4 万有引力 | §2-4 慣性の法則 |
§1-5 静電場 | §2-5 力学的波動 |
§1-6 コンデンサー | §2-6 熱力学(1) |
§1-7 電流 | |
後期Part1 | 後期Part2 |
§1-8 磁束密度 | §2-7 熱力学(2) |
§1-9 電磁誘導 | §2-8 質点系の力学 |
§1-10 過渡現象と交流回路 | §2-9 中心力の下での運動 |
§1-11 半導体 | §2-10 剛体のつりあい |
§1-12 波動光学 | §2-11 幾何光学 |
| §2-12 前期量子論 |
| §2-13 原子核 |
特徴
- 関東物理科が方針とする、大学の物理学の入門的なカリキュラムに沿って、要綱や問題が配列されている。
- テキストは1冊で、中身はPart1とPart2から成る。単元配列は上表を参照。
- 前期は物理を扱う上での道具や計算を主に扱い、後期はそれらの応用として各分野の物理現象を扱う。
- 内容が前後期でPartを跨いで入り組んでいる。異なる講師で学ばせて学生の見地を広げようという配慮によるものらしいが、関西では各講師の指導スタンスや解説方法が著しく異なるため、大きな混乱が生じている。
- 全体的に分量が多いので、大体の先生は延長や補講を行う。特に、前後期ともPart2の比重が若干重い。
- 因みに先生達は各Partを毎年交互に担当するので、同じクラスで2浪すると2人の先生から全分野習うことになる。
- 各§はBOX、講義用問題、EXERCISEから成る。
- BOXには定義や考え方、公式などが簡潔にまとめられている。電磁気分野の線積分や面積分など、特に補足説明もなく大学レベルの数学・物理の表記を用いている箇所がある。
- 微積を使って授業するタイプの講師の授業を受ければ、要項に書かれている事の意味をきちんと学習できるだろう。
- 講義用問題は考察力を磨くための問題が載っている。かつては難しめで重たい問題が選定されていたが、年々レベルが引き下げられており、2015年度時点では教科書傍用問題集並みの問題が並ぶ。このことに対する批判が、生徒や講師の間から出てきている。
- EXERCISEは自習用問題で、講義用問題よりも少し易しいものが載っている。これらはどちらかというと、単に公式や解法テクニックを練習するための作業用問題ではなく、理解を確認し定着させるための問題である。模範解答が2014年に改訂され、まあまあ丁寧かつ豊富になった。2021年度は講義用問題と自習用問題が別々のテキストとなり、自習用問題集は一部の校舎では電子テキストとなっている。
- 案外適当に§・問題が配置されているように見えるが、授業を受けたり(あるいはその先大学などでの講義の結果)して、より統一的視点で物理を見られるようになると、非常に考えられた§・問題の配列がなされていると気付く。
- ・・・筈なのだが、大学の物理学的な指導方針を必ずしも取らない関西では、関東と指導方針の違う先生が多いため、生徒は混乱を生じやすくなっている。
- 年々、難易度が下がってきており、このテキストとは別に難しい問題にあたる必要性を説く講師もいる。
- 関西では、この教材について様々な批判が噴出している。
- 三幣剛史先生は講義用問題について、「この問題をここに置いて何がしたいのか分からない」、「こういう現象は実際にはないから、問題として意味がない」、「問題のための問題でこういうものを扱うべきでない」と批判している。
- 古大工晴彦先生は、「出典には物理教員の少ない単科大なども含まれるため、物理用語の不備不足が散見されるので加筆訂正をすべきだ」と批判している。
- これらは、森下師が敢えて残している節がある(実際、森下師の授業でも適宜言及がある)。
- これだけ批判が出ているにもかかわらず、不思議なことに、独自の関西教材を作ろうとする動きはない。
- 化学や生物とは違い、主導権が関東に握られているからだろうか。
- 下川和大先生は、よく考えて構成されていると高評価を与えている。
- 某講師は名古屋市立大の原子物理の問題で的中したことに関して、「良問を集めてるから的中するのだ」とおっしゃっていた。
テキストの質の良さを認めての使用なのだろう。
- 講師によって、テキスト+αで他の参考書をやるべきか否かの意見が分かれている。
- 関東の方針は物理学を体系的に理解しながら、問題でそれを裏付けていくスタイルである。ゆえに作成者の森下寛之先生は、(きちんと理解しながら取り組んでいれば、他の参考書には無理して取り組む必要はなく)この一冊で十分だと仰るらしい。
- 関西物理科の多数派は、高校物理に忠実で、公式や考え方を一つ一つ理解し、問題演習を通してそれらを身につけるスタイルである。ゆえに関西では多くの講師が、練習量を補充するために問題集をもう一冊やるよう薦める。前期の学習が軌道に乗ってきたら、あるいは夏頃になったら始めると良いだろう。実際このテキストは、復習の価値は少ない(2回もやっても得るものがない)ので、他の問題集を早めに始めておくのは理にかなっている。そもそもこのテキストを繰り返すだけで合格点にた 辿り着くほど、この教材を使うクラスが目指す大学のレベルは低くない。(というのは数学的な考察を用いて大学で学ぶレベルの深い内容を理解できるわけではない関西だから生じることではあるが。)
- 上記に加え、近年はテキストのレベルが落ちたため、関東関西ともに、追加で難しめの問題にあたる必要性を説く講師が出てきている。市販の教材でも良いが、講習なら『物理総合研究』、『特講』、『〇大物理』などが良いとのこと。
- 関東作成のテキストなので「お茶飲みwiki:物理S」も参照すると良い。
授業
- いわゆる微積物理的な授業によって真価を発揮する。
- 物理現象を数学的に表現し、考察していくような、解析的アプローチが好まれる教材である。
- ごく少数の定義をもとに定理を導いていくような、物理学の美しい体系性を意識した授業が行われると豊かな講義になる。
- 関西では、新田克己先生、入江力先生、松井康人先生あたりが担当すると、テキストが十分に活かされる。
担当講師
新田克己
- 名古屋校SA/MA,京都校SA,大阪南校SA
- 物理の本質を突く、いわゆる微積物理を展開。微積を使うため、慣れていない生徒は苦労するかもしれないが、しっかり理解すれば実力は確かなものになるだろう。
- 原子分野では、他の人気講師同様、原子物理発展の歴史も交え、興味深い授業をなさる。
- 総じてクオリティは高く、物理上級者の中にはちらほらファンもいる。
- テキストの批判はあまりしない。
古大工晴彦
- 大阪校SS/MS,大阪南校MA,神戸校MA,福岡校SA/MA
- 本テキスト(および「東京の森下君」)について色々と批判を述べながらも、物理の本質を突くような、クオリティの高い授業を提供する。
- 本テキストだけでは演習量が足りないため、自分の問題集をやるようにと仰る。
高井隼人
下川和大
松井康人
中田正教
入江力
- 名古屋校SA
- 初回授業で数学のフォローを入れた上で躊躇なく微積物理を展開する。
- 本質的な問題しか解かない。
- 本テキストに対する評価は高いが、絶対に解かなければならない問題が入っていないとよく批判し、補助問題を追加する。
牛尾健一
後藤舞子
水谷英貴
豆谷直哉